あるゾウランドリーフランチャイズの実態

日本のコインランドリー業界はここ数年で急速に拡大し、店舗数は2022年に2万3,000店を突破、10年前から約4割増という成長を見せています。共働き世帯の増加や“タイパ”(タイムパフォーマンス)志向の高まりを背景に、24時間無人で利用できるランドリーは「次の生活インフラ」として注目を集め、市場規模は約1,000億円規模へ膨らみつつあります。

こうした流れのなか、埼玉県を拠点とする不動産会社・松堀不動産が展開する 「あるゾウランドリー」 は、“カフェ風デザイン×大型高機能機器×IoT” を売りにした地域密着型ブランドとして頭角を現しています。フランチャイズ(FC)モデルでは 加盟金300万円・ロイヤリティ6% を基本とし、標準的なテナント出店プランで初期投資は約2,900万円──機械2,300万円+内外装ほか600万円──が目安とされています。

投資家・副業オーナーにとって魅力なのは、「人件費ゼロで年利回り10〜20%を狙える」 とうたわれる収益ポテンシャルです。実際、同社代表の堀越宏一氏は著書で「利回り20%を実現するコインランドリー投資」というモデルを提示し、直営店で培った実績をFCに転用しています。

本稿では、こうした市場動向とブランド特性を踏まえつつ、

  1. あるゾウランドリーのビジネスモデルと初期費用
  2. 月次収益シミュレーションと投資回収のリアル
  3. 競合(WASHハウス/ブルースカイランドリー等)との比較と多店舗戦略

を順に掘り下げ、「無人ランドリー投資として本当に魅力的か?」 を検証します。フランチャイズ加盟を検討する際の判断材料として、ぜひ参考にしてください。

目次

あるゾウランドリーとは?|概要とビジネスモデル

無人ランドリー市場の成長とニーズ

日本のコインランドリーは この20年で店舗数が約2倍に増え、2024年時点で全国におよそ23,000店 が存在します。市場規模も 約1,000億円 に達し、共働き世帯の増加や花粉・梅雨時の「部屋干し回避ニーズ」が追い風となって引き続き拡大基調です。

加えて、布団やスニーカーなど “家庭では洗いにくい大物洗い” や スマホ決済・終了通知といった利便性の向上 が新たな利用層を呼び込み、「24時間・無人・短時間」で家事負担を減らすサービスとして定着しつつあります。

あるゾウランドリーのブランド特徴とサービス

  • カフェ風デザイン×大型高機能機器
    • 松堀不動産が運営するあるゾウランドリーは、木目調の内装と明るい照明で従来の“暗いコインランドリー”のイメージを刷新。35 kgの特大洗濯乾燥機やスニーカー専用洗濯機を備え、羽毛布団や上履きまでワンストップで洗えます。
  • IoT連携「Smart Laundry」アプリ
    • 来店前に稼働状況を確認し、終了時はスマホに通知—利用者は待ち時間を有効活用できます。キャッシュレス決済にも対応し、稼働率が導入前比で約8〜10 %向上した店舗もあります。
  • 独自ICカード〈アルカード〉によるポイント制度
    • 100 円利用ごとに3ポイント貯まり、水曜はポイント3倍。チャージキャンペーンやノベルティ配布でリピーターを囲い込み、無人でも顧客接点を強化しています。

フランチャイズ契約形態と収益分配モデル

初期投資モデル(テナント活用)

項目金額(税別)
機械代金約2,300 万円
FC加盟金300 万円
店舗契約費(賃料2か月+敷金)150 万円
開業準備金(広告・備品)150 万円
合計約2,900 万円

※土地購入や新築を伴わないモデルケース。

  • ロイヤリティと月次収益
    • ロイヤリティは 売上の6 %月商100 万円の場合6 万円)。標準シミュレーションでは賃料35 万円・光熱費25 万円などを差し引き 営業利益30 万円/月損益分岐点は月商約70 万円とされています。
  • 契約フローとサポート
    • C説明会参加 → 物件紹介・融資相談 → 加盟契約・機器発注 → 研修・開店準備 → オープン後の定期巡回・修理サポートという流れ。物件探索から開業後の売上向上施策まで本部が伴走し、“不動産会社が母体” という強みで立地確保と融資交渉を後押しします。

要点

コインランドリー市場は右肩上がりの成長産業。その中であるゾウランドリーは デザイン性・IoT・ポイント制度 で差別化し、約3,000万円の投資で年利回り10〜20%も狙えるモデル を提示しています。フランチャイズ検討時は、物件立地と月商70 万円超の実現可否が成否の鍵となります。

開業に必要な初期投資と設備

加盟金・保証金・ロイヤリティ構成

区分金額の目安内訳・備考
FC加盟金300 万円加盟契約時に一括払い。ブランド使用許諾と開業研修を含む。
店舗契約費
(保証金・前家賃)
約150 万円目安として「賃料2か月分+敷金」。物件条件により変動。
機械メンテナンスパック1 万円/月定期点検・軽微修理を本部が代行。
ロイヤリティ(FC料)売上の6 %月商100 万円なら6 万円。販促ツール・遠隔監視システム使用料を含む。

合計モデル(テナント賃借・30坪級)

初期投資約2,900 万円=機械2,300 万円+加盟金300 万円+契約費150 万円+開業準備金150 万円。土地取得や新築を伴わないため、コインランドリーFCとしては中位レンジに収まります。

店舗規模別の機器ラインナップと費用感

店舗規模坪数・設置例機械費用の目安機械費用の目安想定月商レンジ*主な狙い客層
小型15~20 坪
洗濯乾燥機3基
乾燥機6ドラム
1,300~1,500 万円2,000~2,700 万円40~80 万円単身・学生
標準(モデル店)25~30 坪
洗濯乾燥機4基(27~35 kg)
洗濯機1基・乾燥機8ドラム
スニーカー2基
約2,300 万円約2,900 万円80~150 万円ファミリー・共働き
大型40~50 坪
洗濯乾燥機5基以上
乾燥機10ドラム超
2,200~3,000 万円3,000~3,800 万円120~200 万円布団・事業者需要

*月商は立地・稼働率で増減。標準店(月商100 万円モデル)の営業利益は約30 万円(利益率30%)。

ポイント

  • 機械費用が初期投資の 60 %超 を占めるため、店の規模決定=投資額決定。
  • 35 kg級洗濯乾燥機を含む大型構成は布団ニーズを取り込みやすく、回転単価も上がる。
  • 内装や看板は坪あたり20~25 万円が相場。郊外ロードサイドで駐車6台以上確保できれば小型店でも月商80 万円を狙える。

金融機関融資・補助金活用のポイント

  1. 日本政策金融公庫(JFC)の創業融資
    • 無担保・無保証人で最大3,000 万円。コインランドリーは設備比重が高く審査通過率が比較的高い業種とされる。
    • 返済期間は設備資金15年以内、金利は1.5~2.0%台が目安(2025年7月時点)。
  2. 信用保証協会付き融資(地銀・信金)
    • 物件賃借型で担保不足の場合に有効。保証料は年0.4~1.9%。審査では事業計画と自己資金(総投資の20~30 %が目安)が重視される。
  3. 小規模事業者持続化補助金
    • 広告宣伝費や備品購入費に 上限50~100 万円、補助率2/3~3/4。開業時チラシ・Webサイト制作費を賄える。
  4. 機器リース/割賦
    • 国産機器メーカーのリースを使えば機械費用を 1,500~2,500 万円 に圧縮可。ただし総支払額は割高になるため、償却メリット(即時償却税制など)と金利を比較して判断。

資金調達のコツ

  • 本部が融資面談用の事業計画書フォーマットを提供してくれるため、早期に相談して数字を固める。
  • 自己資金は 600~900 万円(総投資の2~3割) を用意できると審査が通りやすい。
  • 融資・補助金・リースを組み合わせてキャッシュアウトを抑え、開業後6か月の運転資金(家賃・光熱費)のプールも忘れない。

これらを踏まえ、「投資額と想定月商のバランス」「自己資金と借入比率」「補助金の時期」 を最適化できれば、あるゾウランドリーは小~中規模の不動産投資と比較しても魅力的な年利回りを目指せます。

月次収益シミュレーション

平均売上・稼働率・電気水道コストの目安

  • 市場平均
    • 20 坪規模の標準店で月商 60 万〜80 万円が一般的な目安とされます。稼働率は「24 時間×14 台で計算して 12 〜 13 % 程度(洗濯乾燥機が1日3時間程度動くイメージ)です
  • あるゾウモデル店
    • 本部公開シミュレーションでは月商 100 万円、水道光熱費 25 万円(売上比25 %)、賃料 35 万円 が基準値。
  • 変動費の感度
    • 別ソースの都市型10 坪モデルでは、水道光熱費が「月売上63 万円に対し20 万円(32 %)」と報告されており、20〜30 % が実勢レンジと読み取れます。

※電気・ガス・水道は売上に比例して増減する純変動費。省エネ機器や深夜電力契約で3〜5ポイント圧縮できるケースもあります。

賃料・リース料・保守費を含む損益分岐点

あるゾウ標準店(30 坪/機械買取)の固定費を次のように整理します。

費目月額区分
賃料35 万円固定
FCロイヤリティ6 万円固定
機械メンテパック1 万円固定
警備・設備維持2 万円固定
44 万円

変動費=水道光熱費25 %と置くと、

損益分岐点(月商)=1−変動費率固定費​≈0.7544​=59万円

実際には販促費や洗剤費(1〜2 万円)が乗るため、月商60〜65 万円が黒字ラインと見るのが安全です。

ROI・投資回収期間のシナリオ分析

シナリオ月商営業利益*年間利益投資額2,900 万円に対するROI資金回収の目安
保守ケース70 万円5 万円60 万円2 %48 年(赤字転落リスク)
基準ケース100 万円30 万円360 万円12 %約8 年
好調ケース150 万円50 万円600 万円21 %約5 年

*営業利益=売上−賃料35 万−ロイヤリティ6 万−保守等4 万−水道光熱費(売上×25 %)で算出。

  • 利回り12 %前後 が業界平均(ニド社コラムでは利回り8〜12 %が目安と紹介)
  • 月商が基準ケースを超えて 130 万〜140 万円帯 に乗れば、5〜6 年で全額回収でき、以降は機械減価償却が終わる13 年目以降に利益が一段増す構造です。
  • 逆に月商が60 万円を割り込むと赤字化するため、立地選定と稼働率改善(アプリ通知・布団洗い客の獲得)が生命線となります。

まとめ

  • 変動費を除いた固定費は約44 万円/月。
  • 月商60〜65 万円が損益分岐点、100 万円でROI約12 %。
  • 売上を伸ばすよりも「光熱費3ポイント削減=年間9 万円改善」の効率が高い場合も多く、省エネ機器/深夜料金契約/稼働分散が利益防衛策になります。

立地選定と顧客ターゲット

人口密度・世帯属性から見る成功パターン

  1. 商圏人口の最小ラインは「半径2 kmで2万人
    • コインランドリー開業支援事業者の立地指標によると、車移動が主流の郊外型でも半径2 km圏に約2万⼈が確保できると稼働率が安定しやすいとされています。
  2. 世帯構成で“洗濯負荷”を見積もる
    • 単身・共働き世帯比率が高いエリア … 洗濯頻度は多いが干す時間がない層→平日夜間・早朝の利用が伸びる。
    • ファミリー層+車社会エリア … 布団や大量洗濯を一度に済ませたい需要→大型機器の稼働率が高まる。
    • 高齢化エリア … 自宅洗濯の負担軽減ニーズと、羽毛布団洗いを年1〜2回まとめて行う需要が見込める。
    • 上記3層がバランスよく混在する住宅地は、売上レンジ100〜150 万円/月に到達しやすい傾向があります。
  3. まとめ指標
    • 人口密度:1 km²あたり500人以上
    • 賃貸比率:30 %以上(単身・共働き目安)
    • 世帯当たり自動車保有台数:1台以上(郊外型のみ)

商圏調査と競合コインランドリーの比較

競合ブランド立地戦略初期投資差別化要素コメント
あるゾウランドリー郊外ロードサイド・駐車6台以上約2,900万円カフェ風デザイン・IoTアプリ・ポイントカード地域密着/オーナー主体運営
WASHハウス九州発・住宅地幹線道路沿い1,200万〜3,000万円本部完全運営代行・24h監視ロイヤリティ無だが管理費体系
ブルースカイランドリー商業施設敷地内(スーパー等)約4,800万円買い物ついで需要・集中精算機売上の20 %運営サポート費

商圏調査フロー(推奨)

  1. 国勢調査データで2 km圏人口・世帯属性を把握
  2. Google マップで既存ランドリーをプロットし空白地帯と過密地帯を可視化
  3. 平日夕方・休日午前の現地観察で駐車場充足度と利用客層を確認
  4. 競合のドラム総数と料金を表にし、「人口1,000人あたりドラム数 <1.5 なら出店余地」を目安に判断

駐車場・視認性・動線の重要性

  • 駐車台数は最低5台
    • 郊外型では来店者のほとんどが車利用のため、駐車5台が“商圏2万人”モデルの前提条件。
  • 生活道路沿いで右折進入不要
    • 幹線道路でも中央分離帯がある地点は敬遠されがち。信号手前やスーパー併設の敷地内がベスト。
  • 夜間の視認性
    • LED看板と全面ガラス張りで「明るく清潔」を演出すると、女性や高齢者も安心して利用しやすい。
  • 動線短縮=稼働率向上
    • 駐車区画→入口→大型機器までの距離を10 m以内に抑えると、大物洗いユーザーのリピート率が高まる傾向が各社ヒアリングで報告されています。

ポイント

  • 人口×世帯属性 の“質”を読み解き、ターゲット在宅時間と稼働ピークを予測。
  • 競合ドラム密度 と 駐車場・視認性 が実際の売上差を大きく左右するため、現地調査と本部のデータ分析を組み合わせて立地を絞り込みましょう。

日常運営とメンテナンス

無人運営を支える IoT 遠隔管理システム

あるゾウランドリーは「Smart Laundry」アプリと店内のIoT対応精算機を組み合わせ、店外でも機器稼働状況・混雑度・売上をリアルタイム把握できます。利用客はアプリ上で空き機を確認し、決済後は終了通知を受信できるため“放置洗い”が可能になり、稼働率は導入前比で8〜10 %向上したという本部データもあります。オーナー側は遠隔で機器再起動や料金設定変更が行え、深夜のクレームも24 時間コールセンターが代行対応—電子マネーの返金やドラム再始動まで遠隔操作で完結します。

清掃・集金・消耗品補充の作業頻度

  • 清掃 : 店内モップ掛け・フィルターのホコリ除去・ごみ回収は1 日1回(30〜45 分)が推奨。副業オーナーは清掃代行を週6日委託し、自身は週末だけ巡回するケースもあります。
  • 集金 : 現金精算機の回収は月3回程度が業界平均。溜め込み過ぎると盗難リスクが高まるため、売上が伸びる月末や雨天続きの後にこまめに回収する運用が一般的です。
  • 洗剤タンク・レシートロール補充 : 大型店であれば週1回、標準店は月2回が目安。本部点検日に合わせて在庫を揃えると手間が省けます。

参考コスト感:清掃・集金・小修繕を外部委託すると月4万〜6万円(週5〜6回巡回)で請負可能という管理サービスも登場しています。

トラブル対応とカスタマーサポート

無人店舗最大のリスクは「機器停止=即売上ゼロ」。あるゾウでは24 hコールセンター+遠隔操作+本部メンテパック(月額1万円)の三重体制で対処します。顧客からエラー連絡が入るとオペレーターがカメラ映像で状況を確認し、遠隔でドラムを再起動・返金処理を実施。解決できない場合は本部と連携し、専門技術員が最短当日駆けつけます。委託管理を活用すればオーナーの現場出動は月1〜2回程度に抑えられ、兼業・多店舗展開でも運営負荷をコントロールできます。

要点

  • IoT+コールセンターで“店に居なくても動く”仕組みを作ると、無人モデルのメリットが最大化。
  • 清掃毎日・集金月3回を守れば、クレームと現金リスクを同時に抑制可能。
  • トラブルは遠隔一次対応→本部駆けつけまでの流れを整備し、オーナーの“ワンオペ負担”を最小化するのが成功の鍵です。

実際のオーナー事例

地方郊外での成功事例(稼働率 30 %超)

埼玉県川越市・県道沿いのロードサイド物件(35 坪/駐車12台)を借り、標準構成+布団専用乾燥機を追加したFC1号店のケースです。

  • 月商 156 万円/稼働率 31 %:大型機(27 kg・35 kg)が夕方~夜に集中稼働し、平均客単価は1,150円。
  • 成功要因
    1. 商圏2 kmで人口2.3万人×賃貸比率37 %——単身・共働き層の洗濯負荷が高かった。
    2. 羽毛布団丸洗いキャンペーンをオープン3カ月間連続実施し、“大物洗い=あるゾウ”のイメージを確立。
    3. 水曜ポイント3倍デーで平日昼間の稼働を押し上げ、曜日の売上偏差が±10 %以内に収束。
  • 収益インパクト:営業利益は月45~50万円(利益率28~32 %)。5年償却を想定しても投資回収4年半で完了

都市密集地での苦戦事例と改善策

東京都杉並区の住宅密集地・10 坪テナント(駐車3台)で開業したFC店。

オープン1年目:月商45~60万円/稼働率8~11 %。競合半径1 kmに6店、うち2店は24 h営業の大型店。

  • 主な課題
    1. 駐車場不足で布団ニーズを取り込めず、客単価が800円台に低迷。
    2. マンション管理組合との交渉に時間が掛かり、チラシ投函禁止エリアが多く認知不足。
  • 改善策
    • 店頭にスマホ用QR決済100円引きクーポンを常設→キャッシュレス比率55 %まで拡大。
    • 予約制「布団まとめ洗いサービス」(夜間預かり→翌日乾燥・たたみ渡し)を導入し、大物比率を12 %→25 %に引き上げ。
    • 平日昼にシェアオフィス利用者10 %オフ提携を結び、稼働の谷を補填。
  • 結果
    • 改善後6カ月で月商75~85万円、稼働率16 %に回復。損益分岐点(約65万円)を超え黒字化を達成。

洗濯乾燥一体機導入による差別化効果

群馬県高崎市の2号店では、スペース効率を重視して洗濯乾燥一体機(23 kg)を4基導入し、従来型「単体洗濯+乾燥」の構成を半分に削減。

  • 回転率+13 %/電気ガスコスト▲8 %——洗い→乾燥の移し替え手間がなくなり、1人あたり滞在時間が平均17分短縮。
  • 恒常的に空きドラムが生まれやすくなり、ピーク時の取りこぼし売上を月6万円削減
  • 初期投資は1体あたり+80万円だが、年間営業利益が+72万円となり、投資回収は約13カ月で完了

示唆

  • 郊外型は駐車台数と大型機ラインナップが稼働率を左右し、30 %超の高稼働も十分狙える。
  • 都市型は競合過密・駐車制約がボトルネック。差別化サービス×キャッシュレス誘導で客単価と稼働を底上げすることが黒字化の鍵。
  • 洗濯乾燥一体機は導入コストが高いものの、回転率向上と人為的オペレーション削減によるROIが高く、多店舗展開時の標準装備として再検討の価値が大きい。

あるゾウランドリーの強みとリスク

スマホ決済・布団洗い対応など差別化ポイント

  • アプリで“空き状況→決済→終了通知”が完結
    • すべての店舗が Smart Laundry システムに接続され、来店前にドラムの稼働状況を確認し、キャッシュレスで決済すると終了時にスマホへプッシュ通知が届く──洗濯中に買い物へ出ても取り残しがない利便性で稼働率が 8–10 %伸びたと本部は説明しています。
  • ポイントカード&キャンペーンでリピーター囲い込み
    • 独自 IC カード〈アルカード〉は100 円利用で9 pt、水曜はポイント3倍。現金ユーザーも特典で電子決済へ誘導し、客単価と再来店頻度を底上げしています。
  • “35 kg特大洗濯乾燥機”で羽毛布団を丸洗い
    • 全店に布団対応サイズを配置し、家庭洗濯できない大物需要を獲得。羽毛布団/カーペット洗いができる店は競合ロードサイドでもまだ少なく、大型機が売上の約3割を稼ぐ店舗もあります。

初期投資回収リスクと稼働率変動

  • 初期投資 2,900 万円を“7〜10 年で回収”が業界平均──機器耐用年数13 年を考えると順当だが、稼働率が月間平均10 %を割る回収計画が大幅に遅延する恐れがあります。
  • 稼働率の現実:平均10 %・安定15 %・好調20 %超。15 %を超えるには①梅雨〜花粉期の需要取り込み②布団など高単価商品の比率アップ③深夜帯稼働の底上げが必須。
  • 季節・燃料費ショックに注意
    • 夏場は乾燥需要が落ち、ガス価格が高騰すると光熱費率が 5 pt 以上跳ね上がることも。月商が 70 万円を下回ると固定費(賃料・ロイヤリティ)に飲み込まれ赤字転落リスクが高まります。

法規制・消防基準・保険などの留意点

区分主な要件・推奨対応
消防・ガス乾燥機乾燥機は堅固な構造物に固定し、排気ダクトには逆流防止・グリス除去対策を施す。使用方法・注意事項を掲示し、十分な換気を確保すること。
建築・用途地域第一種低層住居専用地域では設置不可。都市計画法上、準住居・近隣商業地域などで出店するのが無難。
保険火災・水漏れ・爆発・第三者賠償をカバーする店舗総合保険を推奨。水災・休業損失・借家人賠償特約を付帯すると安心。

まとめ

あるゾウランドリーは 「Smart Laundry+ポイント+布団大物洗い」 の三位一体で差別化し、郊外ロードサイドでは高い集客力を発揮します。一方で 初期投資の大きさと稼働率依存度 がリスク要因。消防・ガス設備基準や店舗総合保険を適切に整備しつつ、稼働率15 %ラインを切らさない運営施策 が投資回収を左右します。

加盟前チェックリスト

サポート内容・ロイヤリティ体系の確認

項目確認ポイント理想形留意点
ロイヤリティ料率・算定基準・最低保証の有無売上歩合 6 % で固定売上歩合 6 % で固定
開業前支援物件紹介・市場調査同行・融資面談サポート現地同行と事業計画書テンプレを無償提供不動産契約手数料や調査交通費の追加請求に注意
開業後支援IoT設定・販促物・定期巡回点検月1回 SV 訪問+販促提案巡回回数超過時の追加費用を確認
コールセンター24 h 対応範囲・返金フロー遠隔再起動・電子返金まで代行現場出動が必要になった際の費用負担区分

契約解除条項・出口戦略の把握

  1. 中途解約違約金
    • 契約残期間に応じた違約金設定(例:残年数×ロイヤリティ1年分)を必ずチェック。
  2. 譲渡承認条件
    • 店舗売却時、本部の事前承認要件・譲渡料・新オーナー研修費を確認。
  3. 機器リースの名義変更
    • 機器をリース契約にした場合、解約時に一括残債が発生するため、売却価格>残債 を維持できるタイミングで出口を設計する。
  4. 原状回復義務
    • テナント退去時の内装解体費を誰が負担するか。FC本部がリユース店として再利用可能ならゼロ円で済むケースもある。

収支シミュレーションと自己資金比率

  • 3ライン試算
    1. 保守ケース:月商70 万/稼働10 % → 年利2 % → 回収不可リスク
    2. 基準ケース:月商100 万/稼働15 % → 年利12 % → 8年で回収
    3. 好調ケース:月商150 万/稼働20 % → 年利21 % → 5年回収
  • 自己資金の黄金比
    • 総投資2,900 万に対し 自己資金700〜900 万(25〜30 %) を用意すると、融資審査通過率と返済余力のバランスが良い。
  • 感度分析
    • 水道光熱費を売上比25 %→30 %に上振れさせてシミュレーションし、黒字を維持できるか検証。
    • 賃料増・ガス高騰・機器故障(代替機レンタル料)を織り込んだワーストケースも計算。

実践 Tip

  • エクセルではなく、本部提供の 月次損益シミュレーター に実地調査で得た「人口・競合・賃料」を入力し、黒字ライン(月商65 万超)をクリアするかを必ず確認。
  • 試算結果に減価償却後の税負担まで反映し、キャッシュフロー目線でプラスになるかを判断すると失敗確率を大きく下げられます。

まとめ|無人ランドリー投資は「手離れ」と「地域需要」が鍵

無人ランドリーは、人件費ゼロ・24 時間営業という “手離れの良さ” と、布団や大量洗濯を一気に処理したい “潜在ニーズ” が噛み合えば 年利10〜20 % を狙える極めて魅力的な投資対象です。一方で、稼働率が月平均15 %を割ると固定費を賄えず 回収が10年以上 に伸びるリスクも隣り合わせ――成功の分水嶺は次の2点に集約されます。

  1. 地域需要を読み切る
    • 半径2 kmで2万人・賃貸率30 %以上・駐車5台確保という「需要×アクセス」の三条件を満たす立地を選び、競合ドラム密度を必ず可視化する。
    • 布団・羽毛布団ニーズを取り込める大型機ラインナップと、アプリ通知・ポイント施策で 稼働率15 %→20 %超 へ引き上げるプランを描く。
  2. 手離れ”を仕組みで担保する
    • IoT遠隔管理+24hコールセンター+月1巡回SV の三層サポートをフル活用し、オーナーの現場稼働を「清掃・集金 週1~2回」まで圧縮。
    • 清掃代行や集金サービスを早期に外注し、複数店舗展開でも運営負荷が指数関数的に膨らまない“仕組み先行”を徹底する。

この2軸を満たせる物件と運営体制を整えれば、あるゾウランドリーは 「実働少×高キャッシュフロー」 を実現できるストックビジネスとなります。逆にどちらかが欠ければ、手間がかかる割に回収が遅れるリスクも高まります。

結論

  • 立地精査と需要シミュレーションが成否の8割。
  • 手離れの良い運営スキームを最初に固めることで、多店舗展開・本業並行も視野に入る。

以上を踏まえ、「自分の資金・時間・リスク許容度」と照らし合わせ、納得のいく数値シナリオが描けるか――ここが加盟判断の最終チェックポイントです。

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